豆まきと家

節分も過ぎ、立春を迎え、ちょっとだけ暖かさを感じるようになってきました。

節分には豆まきをしたご家庭も多いかと思います。

さてこの豆まきですが、このような都市伝説的なものがあるのをご存じでしょうか。

「ワタナベさんちでは豆まきをしない」

知っている人は「あー」と言う感じですが、知らない人にとっては「うそー!」という感じのネタです。

そして豆まきをしない明確な理由もきちんとあるんです。

平安時代に「渡辺綱(わたなべのつな)」という強者の武士がおり、この人が当時の人々を苦しめていた鬼たちを退治したという伝説があるのです。

鬼たちはこの渡辺という武士に恐れをなし、その子孫たるワタナベさんにも近づかないし手も出さない。

だからワタナベさんちでは豆まきをしないと言うんです。

すなわち正確な言い方をするのであれば、ワタナベさんちでは豆まきを「しない」のではなく「する必要がない」ということなんですね。

ヒアリング調査

このネタについての真偽を確かめるべく、私は過去にワタナベさんに会うたびにヒアリングをしてきました。

当初は単なる噂に過ぎないと思っていた私は、半信半疑で質問していました。

ところが次々と豆まきをしないワタナベさんを発見。

現時点でだいたい半分の割合で豆まきをしていないというデータを持っているんです。

実は面白かったのはこのデータではなく、豆まきをしないと回答したワタナベさんたちの言葉なんです。

豆まきをしないワタナベさんの多くが「あーそういえばうちはしないねー」みたいな感じの回答をしたんです。

つまり、豆まきをしない理由をあまり把握しておらず、過去にそれについて家族で掘り下げたりしていないようなんですね。

それって私にとっては信じがたい事なんです。だってテレビを観てたら豆まきのニュースだって見るわけです。そしたら絶対両親になんでうちではやらないんだって話になるはずなんです。

そんな青春時代の葛藤もなく現実をすんなりと受け入れているところに衝撃を受けました。

とはいえ私のヒアリングの対象はほとんどが70代以上の方々なので、もしかすると忘れちゃってるのかもしれません。

この調査、今後も継続する必要がありそうです。

家紋

ワタナベさんで思い出されるのが「家紋」です。

家紋とは先祖代々伝わってきたその家独自の紋章のこと。

家紋は今や絶滅危惧種となり、自分の家の家紋を把握している人の方が珍しいくらいのものです。

家紋の伝承には明確なルールというものはなく、分家だからと一文字を加えたり、まるっきり違うものに変更したり、もともとなかった人が好きなものを採用したりすることが当たり前の世界なのです。

そのため同じ苗字の人にそれぞれ家紋を聞いてみても、おそらく全て違う家紋を答えるでしょう。

ところがワタナベさんに関しては、ほぼ全員が同じ家紋なのです!

これは私の経験からのみではなく、いくつかの文献によっても証明されています。

ワタナベ家の代表紋は『三ツ星に一文字(みつぼしにいちもんじ)』という家紋。別名『渡辺星(わたなべぼし)』

お皿に3つのお団子がのったようなデザインは誰もが一度は見たことがあるはずです。

同様にササキさんは「四ツ目結紋(よつめゆい)」、サトウさんは「源氏車紋(げんじぐるま)」、キクチさんは「違い鷹の羽紋(ちがいたかのは)」の確率は異様に高いのでお知り合いに聞いてみてください。

キュウリ

このような都市伝説的な伝承の話、先祖から伝わる面白い話は他にも多くあります。

例えば「織田家の人はキュウリを食べない」というもの。

織田家の家紋は「五瓜に唐花(ごかにからはな)(別名織田木瓜)」といってキュウリの切り口にそっくりなため、縁起が悪いという理由から先祖代々決して食べないという話です。

同じような話が徳川家にもあり、チョー有名な「三つ葉葵紋(みつばあおい)」はキュウリの切り口に似ているので江戸時代の家臣たちは決して食べなかったという話。

主君の家紋に刃物をつける、そのことに不敬を感じ躊躇した時代があったようです。

どうやらこれらの話、現代ではほぼ消滅しているようですが、調べてみると京都で残っているようなんです。

京都の八坂神社は御神紋が織田家と同じ「五瓜に唐花」なのですが、7月の祇園祭の期間中は氏子さんたちはキュウリを絶つらしいんです。

これは織田家にという理由ではなく、神様に失礼に当たるという理由からのようですが。

京都の人が1ヶ月間お漬物などの料理からキュウリを外すというのは、私のような関東に住む人間にはわからないつらいものがあるのかもしれません。

ご先祖さま

我が家にはこれらの言い伝えはないのですが、もしあったとしたらさぞ不自由だろうと想像してみる。

我が家の家紋は「向かい鳩紋(むかいばと)」といって鳩が2羽いるデザインなので、ハトに関する伝承が残っていたとしたらどうだろう?

「ハトを敬うように」なんてのはまだマシで「ハトを見かけたらひざまずくように」とか「ハトに出会ったら必ずエサをあげるように」などどいうとんでもない言い伝えがあったとしたら面倒くさい事この上ない。

「年1回は鳩レースに参加せよ」とかいうパワハラ系の言い伝えや、「ハトを見かけたらハッとせよ」とかいうダジャレ系の言い伝えもいったいどうしたらいいのかわからない。

余計なものを背負わなくてよかったー、心から安堵する今日この頃です。

もし墓地に行く機会がある時は、ぜひ自身のご先祖さまだけではなく、他家のお墓にも目を向けてみてください。

苗字と家紋の関係に統一性を発見できるかもしれません。

あれ? 珍しい家紋の墓石の前にしゃがみこんで必死にスマホで調べ物をしている変な人がいる・・・

それ、たぶん私です。

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