白河の関と城/5

清水門跡(しみずもんあと)を抜けると、目の前に立ちはだかる石垣に圧倒されます。ムム、こりゃ落とせない・・・

とは言え、この城には落城の歴史がある。それも戦国時代のような遠い昔の話ではなく、慶応4年の戊辰戦争時だ。ものの150年程前に過ぎない。

日本の城郭の中で戦争を経験している城はいくつかあるが、この小峰城はその中でも最も現代に近いところで戦争を経験していることになる。

「平和」という言葉の重みを踏みしめながら、複雑な気持ちのまま石垣沿いを右側に歩く。石段を一歩一歩踏みしめる。振り向くと眼下に芝生が広がっている。当たり前に平和である。

この石段を十数段登り「前御門(まえごもん、平成6年復元)」を抜けると広い芝生に出ます。ここが「本丸御殿跡(ほんまるごてんあと)」。そこからまた石段を登ると小峰城跡のシンボル「三重櫓(さんじゅうやぐら、平成3年木造復元)」の入り口に至ります。

三重櫓は文字通り三層三階の構造。高さは12m。1階は12m四方、3階は4m四方の正方形。急な階段を登っていくと8畳部屋程の広さの3階に出ます。

当時の設計図通りに木造復元しただけあって「石落とし」や「鉄砲狭間」も装備し実戦向けの印象でした。

復元したお城にありがちな資料展示がほぼなく、木目が見える柱や階段などシンプルな造りにとても好感が持てました。

櫓の内外には数名のボランティアさんが活躍していました。お城を見学するといつも思うことなんですが、ボランティアさんは本当にお城や地元が好きなんだなあとつくづく思います。イヤイヤやっている姿を一度も見たことがない。

入り口の受付の方に挨拶をして櫓を出る。外から櫓を仰ぎ見ると、屋根瓦には松平定信の家紋「梅紋」が並んでいます。はるか上には「しゃちほこ」が青空を泳いでいました。

馬と兜

初代藩主の結城家から幕末の阿部家まで7家が藩主を務めましたが、その中に「丹羽(にわ)家」という大名家があります。この丹羽家の家紋がなかなか面白いのです。

「丹羽直違(にわすじかい)」と言う家紋。普通の他の家紋はたいてい説明が難しいのですがこの家紋は簡単。英語の「x(エックス)」を書きます。いわゆる「バツ」を書くのです。

家紋の由来として残っている話は、織田家配下の丹羽長秀(にわながひで)が初陣の時に一人の敵の首を取って布で血刀を拭き、また一人の首を取ってまたその布で血刀を拭いたため血のりがバツの字に付いてそれを家紋としたという話・・・

あっ、と時計を見ると15:10。15:50新白河発の「なすの278号」に乗るべくスマホで経路検索する。おみやげを買う時間を考慮すると・・・げ!15:26白河駅発の東北本線に乗る必要がある。あと16分しかない!

他の遺構もゆっくり見て回ろうと思っていたがもはや無理のようだ・・・石段を駆け下りてたった今来た道を逆戻り。

慌ててヘルメットをかぶり自転車にまたがる。あと10分で白河駅のホームに立っていなければならない。急げー!

自転車を飛ばしていると、刹那、背中に丹羽長秀が降りてきた気がしました。

「自転車とヘルメット」はそれぞれ「馬と兜」に変わり、城内を1周してから「藤門跡」から城外へ出る。

一瞬後ろ振り向くと、走る馬の背中越しに小さくなった小峰城三重櫓が見える。

平和な時代に生まれてよかった・・・なぜか涙が流れました。

ローカル線の旅

白河観光ステーションに戻り自転車を返却。15:20だ。間に合ったー

改札の窓口に「スイカはご利用できません」との貼り紙を発見。スイカというカタカナ表記に新鮮さを覚え、ついフルーツの方を想像してしまう。

大きいスイカを駅員に渡して改札を抜けようとする老婆の姿を脳内でビジュアル化してついつい笑ってしまう。「ですからスイカは利用できませんってば!」みたいな。

15:26発の電車に乗り込む。遠くには一段と小さくなった三重櫓が見えています。

同じ車両には地元の高校生や会社員が乗っています。これが新幹線と在来線の大きな違いで新幹線ではこの生活感を感じることが出来ません。

旅行に行ってローカル線に乗らずに帰ってしまうと、なにか物足りない気分というか何かやり残した感があるのは、この生活臭を感じられないことが大きいのです。

部活で汚れたバッグを床に置いて爆睡する高校生を見る。大満足!

新白河駅に到着しました。たった1駅分だけのローカル線の旅でしたが。

白河の風

新幹線の出発まで20分弱。改札前のおみやげ売店をひと回りします。

なるほど、「ままどおる」は福島県のおみやげだったか。
そうか、赤べこをモチーフにしたボーロね。
むむ、地元の酒蔵で作った大吟醸と来たか。
おお、「家伝ゆべし」も福島だったのね。
はいー、お約束の「ご当地じゃがりこ」出たー

友人の顔を思い浮かべながら、カゴに入れていく。これも旅行の醍醐味だ。

ホームに立ち新幹線の到着を待っていると、今日一日のいろんな後悔が頭をよぎります。

あそこで時間を使いすぎたとか、あそこにも行けばよかったとか・・・

15:50発「なすの278号」が姿を現す。E2系だ。白と青の上下2色をピンクのラインで分けている。

座席に着くと一気に疲れが襲ってくる。目を閉じるともう何も頭に浮かばない。後悔の念はもちろん、楽しかった場面すら思い出せない・・・

・・・白河の風を頬に感じながら、私が誰かと2人で笑い合いながら馬を並走させている夢を見ていた気がします。

それはどこまでも平和で穏やかで、それでいて少し悲しい気持ちが入り混じった不思議な夢でした。

(完)

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