カラスの休日

先日、大きな幹線道路を渡ろうと、自転車で信号待ちをしていました。

目の前で同じように信号待ちをしていた自動車に何気なく目をやると、どこからかカラスが飛んで来て、なんとその車の屋根に着陸するではありませんか!

バサバサッ、カチャカチャっと足の爪が車のルーフにあたる音が聞こえます。

当然その車の運転手も「あれっ」という表情でウインドーから外を見たりしていましたが、まさか頭の上にカラスがいるとは夢にも思わず。

この時のカラスはあまり動きを見せず、ジッとしたまま動きませんでした。

何か体調が悪いのかと思って見ていると、信号が青になり車が動き出してしまいました。

後ろに重力がかかり、ズズッと20cm程後ろに位置がずれ、あっ!落ちる! と思ったその瞬間・・・

そのカラスは羽を半分開き、車の進行方向にしっかりと頭を向け、車の屋根の中心にしっかりと踏ん張りました。

その姿勢はあたかもサーフボードに腹ばいのパドリングから波を感じて立ち上がったサーファーのようだ!

スゲーよ!カラスくん!! 一瞬にして君付けに昇格したそのカラスは、5m・・・10m・・・・と進んでいきます。おい・・・いったいどこまで?

風を切る

この光景、実は私以外にもギャラリーがおり、後続の車は運転しながら指をさしていたし、交差点のはす向かいで信号待ちしていた親子は子供が指をさしていました。

私の次の興味は当然「いつ諦めて飛び立つだろう・・・」という1点に絞られていきます。

がしかし・・・飛ばないんです。いつまでたっても飛び立たない。しっかりと前を見据え、向い風を切り、ときおり羽をばたつかせながら車とともに走っていきます。

その車はもともと大きな交差点の右折レーンで信号待ちをしていたので、発進してしばらくすると右に旋回していくのです。

10m程直進した後、大きく右にハンドルを切っていく。すると左側に重力がかかる。カラスくんは少し羽ばたいて立ち位置を右側に微調整する。

結局カラスくんは振り落とされることもなく、そして飛び立つこともなく視界から遠く消えていきました。

開いた口がふさがらないとはこのことで、ポカーンと見とれたまま自転車を発車できずにいました。

ハッと我に返り腕を組む。ヤツの目的はいったい何だったんだろう・・・

・・・! その時、私の自転車から5m程の歩道にバサバサっとカラスが降り立ちました。軽く毛づくろいをした後、車道を見つめるその姿は紛れもないカラスくんです。

そうか、そういうことか・・・・全てが了解しました。

カラスくん、ヤツはシンプルに「遊び」を楽しんでいたのです。

遊ぶということ

街中で見られるカラスは「ハシボソガラス」という種類で知能が発達していることで有名です。まあズル賢いと表現されることが多いですね。

世界中で驚愕の行動が報告されており、クルミを信号待ちの車道に並べて車に踏ませて中身を食べるとか、貝を上空から道路に叩き落として中身を取り出すとか。

小枝を使って木の中の虫を取り出す姿も観察されており、こりゃもうチンパンジーくんのレベルです。

すぐ横にいるカラスくんの佇まいを観察してみる。

やや息が上がりくちばしを軽く開いたまま、ときおり羽を広げてくちばしで毛づくろいをしている。

信号が赤になり車が停まり出すと体の動きを止め、真剣なまなざしで車を見渡している。完全に次のチャンスを待っている目だ。

プールのウォータースライダーの順番待ちをしている子供の目と同じ色をしている。ドキドキ感とワクワク感、それらが混在した「遊び」を待つ者の独特の色だ。

いつもの私なら何時間でもカラスくんの行動を観察するところですが、あいにくこの時は病院での会議時間が迫っており、泣く泣くこの場を去ることになりました。

もしやカラスくん、私の自転車ヘルメットもターゲットになる? と思いきや見向きもしていない。だよねー。

自転車を飛ばしながらふと考える。自分はあんな目をする瞬間があるだろうか・・・

熱いハート

カラスの遊びと言えば、滑り台をすべり降りる、羽を広げたまま風に乗る、電線に逆さまにぶら下がる、ボールをくわえて上から落とす・・・などなど、いろんな姿が報告されています。

私は専門家ではないので、この行動が遊びになるのか、また生物にとっての遊びがどんな意味を持っているかはわかりません。

ただ思うのは、うらやましいなぁということ。

カラスはカラスで日々大変なわけです。エサを取ったり縄張り争いをしたり子育てをしたり。

その合間を縫って車上サーフィンを楽しむ。その姿勢は我々人間も見習うべきだと思うんです。

忙しくて、時間に追われて、休日はグッタリで遊びまで頭がまわらない・・・そんな生活をしている人がほとんどだと思います。

ここは一念発起して、なにか自分が夢中になれるものを探してみましょう。

いままでやりたくてもやれなかったことなどを手当たり次第にやってみる。もしかすると子供の目になれる何かに出会えるかもしれません。

「遊び」によって生活にゆとりが生まれ、心を満たすことが出来ればサイコーですね。

ヤツのおかげで、思いがけず遠い昔に忘れてきた熱いハートを思い出しました。

カラスくんありがとう!

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