さて、何を食べよう?
上田城の二の丸橋を渡り、二の丸通りを北上してみる。
前方にはまだ冬の色を残した低山が山肌を見せており、空の青は頂上からさらに上に向かって薄い青から濃い青へグラデーションを放っている。
本当に手が届きそうなほど近くに山がある。もしかしたらイノシシとか見えちゃうんじゃないか!?
私も高校卒業まで身近に山があることが「日常」であり、意識するか否かにかかわらず「そこにある」存在でした。
「ふるさとの山に向ひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」(石川啄木『一握の砂』より)
私の高校の遠い先輩が、私の故郷の山を読んだ短歌です。
あーわかるなー、いまならわかる・・・いまさらか!って感じですけど。
北国街道(ほっこくかいどう)に出る前に「旧北国街道」という看板が見えてきました。
かつては松尾芭蕉が歩き、さかのぼれば上田城から撤退した徳川勢が走った街道です。
北国街道柳町
すごい。まっすぐだ! 車も人もほぼいない。道の両脇には真新しい民家がまばらに建ってはいるが、目を細めると江戸時代の宿場町にタイムスリップしたかのよう。
しばらく歩くと江戸時代からの商店街「柳町」に出ます。現在は新旧いろんなお店が並んでいます。
どこかでゆっくりと信州蕎麦などを・・・などど思っていたら、「美味だれ焼き鳥(おいだれやきとり)」というのぼりを発見。ご当地グルメのようだ。名前だけでうまそう。
お店の外で食べられるようだ。近くにおはぎのお店があったのでこれを昼食としよう。
さてこの美味だれ焼き鳥、見た目がちょっと普通じゃない。一見ねぎまの焼き鳥に大根おろしをかけてその上から焼き肉のたれをかけた風情。どれどれ・・・おっと大根おろしじゃない。おろしニンニクだ! これはうまい。クセになる味だ。
お店の外にある櫓のような建物の2階にあるベンチに座って焼き鳥を食す。下には小川が流れ、山からの風が木々を揺らす。空がひたすら青くてぽっかりと雲が浮かんでて。
真田昌幸さん、ここを手放したくなかったんだな・・・
柳町のお店をひとつひとつ覗きながら、もう上田駅に向かう時間だ。
駅前通りを歩いていると、遠方に行列を発見。なんだろ?
「富士アイス」という看板がある。この季節にアイスで行列?
ソウルフード
遠くからこわごわと観察をしてみると、どうやらおやき的な大判焼き的な物をみなさん大量に買っているようだ。
スマホで検索すると、「志まんやき(じまんやき)」という上田のソウルフードらしい。1個90円。安っ!
購入のシステム、というか自然発生的に出来ているシステムは、窓口で店員さんに個数を伝えてから行列の最後部に並んで順番を待つ、てな感じ。一見さんがシステムを理解するためには3分間の観察が必要。
ようやく焼き立ての「じまんやき」を受け取り路地裏に隠れて頬張る。あふあふうまい! 中身が多くて皮が薄いのではみ出る量が尋常ではない。絶対手に付くやつだ。
ようやく空腹がなくなってきたところに「信州アップルパイ研究所Q」という謎のお店を発見。中を覗くとリンゴの品種別にパイが並んでいる。これまたお土産に買ってしまう。
そろそろ上田駅に戻らなければならない。次なるミッションが待ち受けている。実は日帰り旅行の目的地は上田駅だけではなく「小諸駅」も含まれているのだ。
上田駅に戻る。今度は新幹線ではなく「しなの鉄道」だ。改札前に券売機が2つありどちらもほどほどに行列が出来ている。みんな割と若い人たちなのにSuica、PASMOを持っていないのか・・・とスマホを出して改札を抜けようとすると・・・あれ?通れないぞ。もしや・・・
券売機までダッシュして戻ると「ICカード未対応」との注意書きが! いいねー、しなの鉄道さん! 裏が白い厚手の切符をうやうやしく駅員さんに渡すとスタンプを押してくれました。こりゃたまらん。
改札を抜けると地方ローカル線の雰囲気が漂う。いい感じ! 上田発13:57の小諸行きはSR1系赤の最新車両だ。2両編成! なんかカワイイです。
上田に別れを告げ、信濃国分寺ー大屋ー田中ー滋野ー小諸と人の名字のような駅が続く。まるで野球投手の継投のようだ。
小諸駅の改札を抜けると懐かしさ満点のエモい待合室がある。中にはストーブがあったり、外では地元の農産物が並んでいます。
小諸城
小諸駅を出る。駅前に小さな建物が並び、左右は開けて青空が異様に広い。
上田は観光地化しており私には眩しいくらいだったが、ここ小諸はこじんまりとしていて素晴らしい。来てよかった!
目的地は「小諸城址 懐古園」。小諸城は第一次・第二次上田合戦で徳川軍の前衛基地だった城。真田氏ゆかりの上田を見た後は徳川氏ゆかりの小諸を見てみようというのが今日の旅行計画でした。
駅の東側から西側に陸橋を越えていくと三之門(さんのもん)の前に「憩石(いこいいし)」という大きな石があります。
説明板を読むと、第二次上田合戦の時に徳川秀忠(家康長男)が腰を下ろした石のようです。んーついさっきまで上田で美味だれ焼き鳥を食っていた身としてはさすがに腰は下ろせない・・・
雰囲気のある三之門(国・重要文化財)をくぐると、公園でありながらところどころに城跡の風情が見え始めます。
懐古神社の境内に「鏡石(かがみいし)」という50cm×50cm程のピカピカの石があります。小諸城を作った武田信玄の軍師・山本勘助が朝夕この石に自分の顔を映して内省したと伝わっています。
神社の境内を抜けて天守台に登ります。約15m四方の天守台はひときわ小高い所にあり中央に立つだけでかなり怖い!
際まで行くなんてムリ! 下を覗くなんてとんでもない! でも景色はサイコー!
ゆっくりと小諸城周囲の堀を見ながら懐古園をあとにしました。
余韻
そろそろ帰る時間だ。なんだかバタバタとした旅行だったが日帰り旅行なんてこんなものだろう・・・
また上田駅に戻って北陸新幹線ってのも能がないので、軽井沢駅から新幹線に乗ってみようか。
ローカル線のホームってなんでこんなに癒されるんだろう? 時間がゆっくり流れて、風が野鳥の声を運んできて。
しなの鉄道の2両の電車で平原ー御代田ー信濃追分ー中軽井沢ー軽井沢と山を縫って走る。
歴史の舞台から徐々に現代の別荘地に移り変わる風景が印象的だ。
軽井沢駅で16:47発の北陸新幹線はくたか568号を待つ。ホームに立つとどっと疲れを感じる。
ホームから遠くを眺めると日没を待つ山並みにスキー場のリフトが動いている。この時間になるとさすがに肌寒い。
両手に息を吹きかけズボンのポケットに手を入れると指先に何かが当たった。上田の真田神社でゲットした「メタル六文銭」だ。
瞬間、誰かに何かを言われた気がした。何かを示唆された気がした。空から言われた気がした。
それが何かはわからなかったが「メタル六文銭」が少し重く、少し暖かくなった気がして、左手でギュッと握りしめた。


