パンの耳

以前勤めていた会社の近くに評判の食パン専門店がありました。

食パンと言っても10種類近くのバリエーションがあり、バターが多かったり生クリームが入ったりとパン好きにはワクワクする品揃えです。

お店の看板は控えめで、店内はこじんまりとしていて3人も入ればいっぱいになるほど狭い所でした。

焼きたての食パンを求める方は焼き上がりの時間に合わせてくるため行列が出来たりしていました。

私は職場を退社後によく寄っていました。

私がいつも狙っていたパンは実はメニューにはないのです。

しかもある時とない時がある。運次第。

そうです。「パンの耳」です。

準主食

私はこれが大好物で本体のパンよりも好きなのです。

なんならパンを捨てて耳を食べてもいいくらい。

子供の頃によく母親が近所のパン屋さんからビニール袋いっぱいのパンの耳を買っていました。

小学校から帰るといつもおやつ代わりに食べていたため、私にとっては準主食でした。

この頃に食べていたパンの耳は8枚切りにした食パンの耳部分でした。

おそらくサンドイッチを作るために8枚切りの耳だけをカットして詰め合わせたのでしょう。

私にとってパンの耳と言えば、長年この幅1cmの詰め合わせでした。

ところがこの食パン専門店で出会ったパンの耳は大きさ約15cm×15cmの薄いもので衝撃を受けました。

焼きあがった食パン1斤の両端を薄く切ったものでした。

久しぶりに買って食べてみるととても懐かしい味でいくらでも食べられてしまう悪魔的のうまさでした!

小心者

さてここで問題になるのがパンの耳の買い方です。

運が良ければレジの横に袋に5枚程度入ったパンの耳が格安で並んでいます。

が、小心者の私は「パンの耳をください」と言えないのです。恥ずかしくて。

私にはメニューにある食パンは不要、耳だけが食べたいのですが、食パンを買わずに耳だけを買うのが恥ずかしくて言い出せないのです。

そのためいつも奥に並んでいる食パンをつい買ってしまい、「ついでに耳も買おうかなー」などと聞こえよがしの独り言をいいつつ買っちゃうわけです・・・

っていうかパンの耳だけ買える人っています?

「いやいや普通に買えますが何か?」って人、当然いますよね。

私、無理なんです。小心者なので・・・

偵察活動

以上の私的な事情により、想定しうる最悪のシチュエーション。それは、

「勇気を出して店に入ったのにパンの耳がなかった時!」

これに尽きます。

本命ではなかった食パンのみを小脇に抱えて店を出たあとの寂寥感たら・・・

そうなると考えられる対策は入店前の偵察活動しかありません。

つまり一度店の前をスルーしつつ入口の窓から在庫確認をするのです。

一発で決めないと不審者として通報される可能性もあるので気合を入れて通過します。

真横をガン見しつつ歩くので前方の歩行者にも10%程度の注意を割く必要があり高度な技術が必要です。

この技術を体得し買えたパンの耳は格別の味です。

食パンもセットになりますが大満足です。

値引きシール

小心者と言って思い出されるのがスーパーの値引きシールです。

私は値引きシールの貼られた商品だけ買いたいのに他の正価品もかごに入れちゃいます。

「値引き品だけ買ってる!」と周りの人に思われたら恥ずかしー、と思っちゃうんですね。

誰も思わないっつーの! とツッコミたくなるところですが、そこが小心者たるゆえんなのです。はい。

例えば「A商品」と、値引きされた「A’商品」があったとすると、余計な「B商品」を合わせて買ってしまいます。

だったら値引きされていない「A商品」だけを買えばいいものを、「A’商品」と不要な「B商品」を買ってしまうのはなぜでしょう?

明らかにスーパーの閉店間際のシールを待っていると思われる強者の奥様を発見すると、ついつい遠くから観察してしまいます。

シールを貼りに来た店員さんに奥様が手に持っていた商品を「貼ってよ」と差し出した時は失神しそうになりました。

自分は自分

そういえば私は昔から食品売り場の試食が苦手でした。

試食したら買わなければ申し訳ない気分になるのです。

よくデパ地下で次から次への試食をしている人を見かけますがこれまた失神しそうになります。

これまた観察していると買う気などさらさらなく普通の表情で試食しています。

ひれ伏す思いです・・・

若いころは年を取ればもう少し図太くなるだろうと思っていましたが結局変わらずに今日に至ります。

もう少し図太くなれたら楽だろうなあ、と思いつつも、こんな自分でもいいかなとも思っています。

苦手を克服することも大事ですが、苦手を個性として尊重することも同じくらい大切なことだと思っています。

自分は自分の最大の理解者でありたいものです。

自分をちゃんと認めてあげて気楽に生きていきたいものですね。

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