◆ はじめに
「もし親が亡くなったら、どれくらいお金がかかるのだろう」
「葬儀や相続の準備、何から始めたらいいのか分からない」
介護をしているご家族から、こうした声を聞くことは珍しくありません。介護の先には必ず「看取り」と「その後の手続き」がやってきます。心の準備も簡単ではありませんが、同時にお金の準備も避けて通れない現実です。今回は、親の最期に関わるお金の流れと、その後に必要となる手続きを、ケアマネとしての経験とFPの知識を交えて整理してみたいと思います。
◆ 看取りにかかるお金
最期をどこで迎えるかによって、かかる費用は大きく変わります。在宅の場合は、訪問診療や訪問看護、訪問介護を組み合わせて利用します。自己負担は1〜3割と聞くと軽く感じるかもしれませんが、終末期は利用回数が増えるため、月に5万円から10万円前後かかることもあります。
一方で、病院や施設での看取りでは、医療費や居住費に加えて「終末期加算」などが上乗せされ、数万円から十数万円ほど余分にかかるケースも少なくありません。「どこで最期を迎えるか」という選択は、本人や家族の思いに加え、費用の見通しを含めて話し合っておくことが大切だと感じます。
◆ 葬儀にかかる費用
その後に迎える葬儀は、想像以上に大きな出費となります。全国平均は100万円前後といわれますが、実際には形式によって大きく幅があります。最近では家族葬や直葬といったシンプルな形を選ぶ家庭も増えており、30〜50万円程度に抑えることも可能です。一般的な葬儀であれば70〜120万円程度、大規模なものになると150万円を超えることもあります。
「思った以上に費用がかかった」と感じるご家庭が多いのも事実です。だからこそ事前に「どんな形で見送りたいか」を話し合っておくことが、心の準備と同時に金銭面の準備にもつながります。
◆ 死後に必要な手続き
葬儀が終わったからといって、すぐに気持ちを落ち着けられるわけではありません。ご家族には間を置かず、年金の停止や健康保険・介護保険の資格抹消、銀行口座や不動産の名義変更といった手続きを進める必要があります。これらには期限があるものも多く、慌てて動くうちに手続きの順番を間違えてしまう方も少なくありません。
FPとしての経験から言えるのは、「流れを事前に知っておくこと」が混乱を防ぐ最大の備えになるということです。必要な書類や大まかな手順だけでも把握しておくと、いざというとき大きな安心につながります。
◆ 相続と家族の関係
さらに気をつけたいのは、相続をめぐる家族の関係です。介護の負担が偏っていた家庭では、「自分ばかりが大変だったのに、遺産は平等に分けるのか」という不公平感が表面化することもあります。そうした状況を防ぐためには、遺言書の作成や家族信託、生前贈与など、あらかじめ準備を整えておくことが有効です。
また、介護に関わった子どもの「寄与分」を記録に残しておくことも、のちに正当な評価につながります。ケアマネの現場でも、日々の介護の記録が相続の場面で大切な証拠として役立った例を見てきました。お金の準備だけでなく、家族関係を守る準備でもあるのだと実感します。
◆ 現場で見てきた声
実際にご家族と関わる中で、「最後の入院費が払えず親戚から一時的に借りた」「葬儀費用をどう工面するかで兄弟が口論になった」「銀行での相続手続きが分からず、何度もやり直しになった」といった声を耳にしてきました。そのたびに、早めに備えることがどれほど家族を助けるかを痛感します。
◆ まとめ
- 親の最期には、在宅・病院・施設いずれの場合も数十万円単位の費用がかかる
- 葬儀費用は平均で100万円前後、形式によってはさらに大きく変動する
- 死後の手続きには期限があり、流れを知っておくことで混乱を防げる
- 相続対策はお金だけでなく、家族関係を守るための準備でもある
◆ おわりに
この全10回を通じて「介護とお金」の全体像をお伝えしてきました。介護が始まった直後に増える出費や、親のお金を把握しておく重要性、制度の活用やきょうだい間の関係、そして仕事と介護の両立まで。最終回では「最期とその後」を取り上げました。
どうかこの連載が、ご家族の“今”と“これから”に寄り添い、安心と希望を持っていただけるきっかけとなれば幸いです。
以前ご紹介した『お金と資産の見える化チェックリスト』を作成しました。今後の家族会議等にご活用ください。

