先日、神奈川県の景勝地、箱根に行ってきました。
箱根湯本駅から箱根登山電車に乗り換え、ゆるっと強羅駅に到着しました。
相変わらずの雨。しかも止む気配なし。
とは言っても日常によくある雨天特有の重苦しさはさほど感じず、森の風景も明るく足取りも軽い。
今日の目的地は「大涌谷(おおわくだに)駅」。
そして今日のミッションは、箱根・大涌谷名物「黒たまご」を食べること。
そう、そのためだけに朝5時起きでここまでやって来たのさ!
ただ懸念材料がひとつあり、雨と風の中この先のロープウェイが無事に動くかどうか・・・
ここからケーブルカーに乗り換え、その先でまたロープウェイに乗り換えてようやくゴール。
途中の足止めも覚悟しながら、ケーブルカーへの乗り換え口に向かう。
ケーブルカー
箱根湯本駅から強羅駅までは「箱根登山電車」という急坂を登るための登山電車を利用します。
この登山電車は日本国内におけるレール上を車輪が走るタイプの電車の中で、最大のこう配を登る電車です。
ところがここから先はさらに急坂となるため、車輪とレールの摩擦では登ることができません。
そこで登場するのがこの「ケーブルカー」です。
ワイヤーで車両を引っ張りあげ、そして下ろすのです。
駅のプラットホームでケーブルカーの到着を待つ。雨は止まない。
「人はなぜ旅に出るのだろう?」
すると、雨に光る緑の森を抜けて坂の上から青い車両がゆっくりと滑るように下りてきました。
アナウンスが流れる。
「この先の箱根ロープウェイはこれ以上天候が悪くなりますと運休となる場合がございますのでご了承ください」
霧の中へ
車両に乗り込むと、内部は階段状になっています。
傾斜がきつすぎて一般的な車両では床面を歩けないため、数メートルごとに段差をつけた構造になっています。
シートに座る。さほどの混雑もなく老夫婦、子供連れ、友人同士、撮り鉄らしき人がまばらに座る。
シートになにやら模様がついている。「あじさいか。そういえばこの沿線はあじさいが有名だったっけ」
音もなくスーッと走り出す。言われてみれば電車とは出発時の体感が違う。引っ張られている感じ。
シートから身を乗り出し、進行方向の山の上を見上げてみる。
ほぼ一直線の線路の先には濃い霧がかかっていて数十メートル先で線路が霧に溶けている。
なんか夢のようだ・・・なんて言ってる場合じゃない。ロープウェイはどうなる?
諦念を抱きつつ前方の霧を眺めるも不思議と悲壮感はない。
「行けるとこまで行ってみるかー」
霧のパノラマ
ケーブルカーの終点「早雲山駅」に到着。駅の周囲は霧また霧、霧しか見えません。
ロープウェイへの乗り換え口に行くと「現在運行中」と書かれている。
よし! 改札を抜けると、普段なら混雑しているはずの乗り場がガラガラ。あっという間に乗車できました。
目的地はたった1駅。「大涌谷駅」に向かって動き出す。
駅舎内のレールを滑り出し、いよいよゴンドラが駅舎から飛び出す。箱根ロープウェイ大涌谷の360度大絶景!
はい、真っ白。やっぱりねー。わかってたよ。360度のパノラマで真っ白。
ところが進むにつれてますます霧が深くなり、うっすら見えていた緑も見えなくなってきました。
ゴンドラの床中央に小窓があり、真下の風景が見られるようになっているのですが当然真っ白です。
すれ違うゴンドラも全く見えなくなり、見えるのは頭上のロープが数メートルのみ。
するとある錯覚が襲ってきます。「これ、止まってんじゃないか」
非日常の効能
ロープウエイは電気で駆動するものではなく音が全くないため、対象物がないと動いているかどうかがわからないのです。
ホワイトアウトの中、動いているかどうかもわからないゴンドラに乗っている。
先が見えず、前進しているのかも分からず、自分の現在地も分からなくなると人は不安になりパニックになる。『五里霧中』という言葉を身をもって体感しました。
さて無事に大涌谷駅に到着し、お目当ての「黒たまご」を買って売店隣接のカフェで食べることにしました。
温泉でゆでたことで硫黄の化学変化で真っ黒になったゆで卵、殻を割って塩だけを振りかけて食べる。んー大満足!
窓から見える外の風景は、箱根火山の噴煙に濃霧が重なり、硫黄の強烈な匂いも相まってこの世の物とは思えない非日常のシーンでした。
人は非日常を味わうために旅をするのだろうか。
定期的に非日常を味わうと日常はどう変わるのだろう。真っ白な卵の殻が真っ黒になるような心理的な化学変化が起きることで仕事が頑張れたりストレスの耐性がアップしたりするのだろうか。
手に取った真っ黒な卵をボーっと眺めながら、ふと仕事のことを考えていた自分に気付く。
「よし明日からまたがんばるかー!」


