「親の介護が始まったら、仕事はどうすればいいのだろう」
「休むべきか、それとも続けるべきか判断がつかない」
介護が始まった直後、ご家族からこうした声を聞くことは少なくありません。
突然の出来事の中で、仕事との向き合い方に迷われるのは自然なことだと思います。
実際には、会社員の方には介護と仕事を両立するための制度が一定程度用意されています。
ただ、その存在や具体的な使い方を知らないまま、結果として離職を選ばざるを得なくなるケースも見てきました。
介護は短期間で終わるとは限らず、想定より長く続くことも少なくありません。
そのため、「一時的にどうするか」だけでなく、「続けていくためにどうするか」という視点が大切になってきます。
今回は、会社の制度をどのように活かしていくかを、「お金」と「働き方」の両面から整理してみたいと思います。
介護休業
まず思い浮かぶのが、介護休業制度です。
要介護状態にある家族1人につき通算93日まで取得でき、一定の条件を満たせば、雇用保険から給付金が支給されます。
収入の目安としては、休業前の約7割程度とされています。
制度としては安心材料の一つではありますが、実際には3割ほどの収入減となる点は見過ごせないところです。
住宅ローンや教育費などの固定費がある場合には、この差が家計に影響することも少なくありません。
そのため現場では、介護休業を長期間利用するというよりも、介護認定の手続きやサービス導入など、初期の整理に充てるケースが多いように感じます。
介護休暇
介護が始まると、日々の中で細かな対応が増えていきます。
通院の付き添いや急な呼び出し、役所での手続きなど、一つ一つは短時間であっても、積み重なることで負担は大きくなっていきます。
こうした場面で活用しやすいのが介護休暇です。
年5日(対象家族が複数の場合は10日)まで、時間単位でも取得できるため、
必要な分だけ仕事を調整することができます。
この介護休暇は、法律上は無給とされており、取得した時間分の給与は支払われないのが原則です。
ただし、会社によっては有給扱いとしている場合や、積立休暇を充てられるケースもあります。
そのため、制度を利用する際には「何日取れるか」だけでなく、「給与がどうなるか」もあわせて確認しておくことが安心につながります。
働き方
制度の活用とあわせて考えておきたいのが、働き方そのものです。
短時間勤務や時差出勤、テレワークといった制度は、収入面だけを見ると不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、離職せずに働き続けることができるという点では、結果として家計の安定につながる側面もあるように感じます。
介護は想定より長く続くことも少なくありません。
その中で、無理を続けるよりも、続けられる形に整えていくことが、後々の負担を軽くすることにつながるのではないでしょうか。
独自制度
もう一つ、見落とされがちなのが会社独自の制度です。
法定の制度に加えて、
有給扱いの休暇や積立休暇の利用、相談窓口の設置など、企業ごとにさまざまな支援が用意されていることがあります。
これらは収入減を抑えることにもつながるため、一度就業規則や社内制度を確認しておくことが安心につながります。
制度として存在していても、実際に使えるかどうかは職場環境による部分も大きく、早めに情報を整理しておくことが大切だと感じます。
現場の声
実際にご家族と関わる中で、
「制度があることを知らずに退職してしまった」
「もっと早く相談していれば働き方を調整できたかもしれない」
といった声を耳にすることも少なくありません。
一方で、制度を活用しながら仕事を続けている方もいらっしゃいます。
その違いは、制度そのものというよりも、「知っているかどうか」「相談できたかどうか」による部分が大きいように感じます。
親の介護と仕事の両立は、簡単に答えが出るものではありません。
それぞれのご家庭や働き方によって、選択は大きく異なります。
ただ、制度を知り、少しずつ環境を整えていくことで、無理のない形に近づけていくことは可能です。
すべてを一度に整える必要はなく、できることから一つずつ進めていくことが、結果としてご自身とご家族の安心につながっていきます。
日々の中で迷う場面もあるかと思いますが、その一つ一つの判断は決して無駄にはなりません。
ご自身のペースを大切にしながら、無理のない形を見つけていきましょう。

