光る銀の玉

なんとなく捨てられないものと言えばなんでしょう?

着古して馴染みまくったヨレヨレのTシャツとか、いざという時に使うかもしれないと交換後の古いシェーバーの刃とか。

デパートのショップ袋は定番で、ギフトのリボンとかぬいぐるみ、影響を受けた小説などなど挙げると切りがありません。

この数年で私の前に彗星の如く登場した捨てられないモノがあります。

それは「パウダー系化粧品の中にある銀玉」です。

これはロールオンタイプの制汗剤のようなパウダーを溶かした化粧品の中に入っていて、下にたまったパウダーを攪拌する目的で入っている銀色の玉のことです。

振ると「カチカチ」と音がするのがこの商品の特徴。

ある時、使い終わった制汗パウダーを分別処理しようと内部を洗ったところ、この銀玉が出てきました。

パチンコ玉より2周りほど小さいその玉を良く洗い、目の前にかざしてみると・・・なんと美しい!

その美しさに見とれてしまい、眺めたまましばらくフリーズしていました。

「ベアリング」という工業部品があります。

軸をなめらかに回転させるための部品で、摩擦をゼロに近づけるためにパチンコ玉のような銀の球が使われています。

自転車の前輪をエイッと持ち上げて手で回してやるとタイヤがあたかも摩擦がないかのように長時間回り続けるのは、この「ベアリング」があるおかげなんですね。

私は自転車修理が趣味なんですが、初めてタイヤのホイールを分解したときに出てきたベアリングの美しさに驚いた経験があります。

美しいというよりも神々しいと言える感じ。

決して人目の付かない場所にいながら、妥協なく精度の高い仕事をしている部品に心から感動しました。

このベアリングに使われている銀色の球は精度が1万分の1ミリというシロモノなので、私が目の前にかざしている化粧品の銀玉とは比べようもないことは分かっています。

それでもキラキラと輝くこの銀玉・・・小学生の頃であればクッキーが入っていた缶の中に入れて宝物になること間違いなしの輝きです!

今すでに3個の銀玉が洗面台の上に並んでいます。いやー美しい・・・

他人にとっては価値がないが、自分にとっては価値があるもの。

これをどう処理するかという問題は、古今東西、永遠のテーマです。

趣味で集めたコレクションが家族に理解されずに苦労している人もたくさんいますが、その家族もまた苦労しているのが現実なんですね。

やはり一番の解決策はコレクションをしないことだと思うんですがどうでしょうか?

大抵のコレクション品は世界のどこかに展示されており、調べてみるとその類の博物館が必ず存在するものです。

自宅で蒐集するのではなく定期的にそこに通って鑑賞することに決めるんです。交通費と入場料がかかりますが買い集めるよりは安価でしょう。

どうしても毎日眺めて自分の気持ちを上げたいのであれば、一つだけ、たった一つだけ買って自室に飾るのはいかが?

さてさて私のコレクション、小さい銀玉はいったいどこでどうやって鑑賞すればいいのだろう?

ベアリングの工場見学でもしてみるか・・・いやでも作る工程じゃなくて手に取って鑑賞したいんだよなー

という自己問答のあと、結局一つだけ残った銀玉は我が家の洗面台の片隅で静かに光を放っています。

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