先日、事務所のトイレ掃除をしていました。
あー今週は掃除当番か・・・ついてないなぁー・・・などど私ひとりしかいない会社でブツブツつぶやく。
使っていたのは塩素系の洗浄液。それを付けて5分後に流すだけできれいになるというもの。
こする手間がないので時間を有効に使えます。スグレモノ。
5分後に流そうと手を洗っていると、電話の呼び出しが鳴ったので慌てて受話器を取りました。
少し込み入った案件だったので、こちらから何件かに電話を入れるともうトイレのことなど頭から飛んでいました。
そしてあろうことか、5分後に流すことをすっかり忘れてそのまま退社してしまったのです。
翌日、いつも通りに出勤し事務所のドアを開けた時、ん? と思ったのですが、バタバタとスルーしていました。
さてトイレに行こうか、とトイレのドアを開けた時、うわっ塩素満点! 目に染みるくらい! あーやらかしたか・・・
でもその時に私が感じた正直な感想は「あー久しぶりにプールに行きたいなー」というものでした。
ラベンダー
匂いというものは記憶と強く結びついているもので、私の中では「モーレツな塩素」=「プール」という構図になっているんでしょう。
夏の強い日差しと光るプールの水面、小学生時代の思い出がしばらく頭の中を駆け巡りました。クンクン・・・あーこれこれ。
匂いが記憶を呼び起こすこの現象のことを「プルースト効果」と言うそうです。
マルセル・プルーストというフランスの作家が『失われた時を求めて』という小説の中で、口にしたマドレーヌの匂いをきっかけに主人公が幼少期の記憶をフラッシュバックさせるという場面があったことから「プルースト効果」と呼ばれるようになったとか。
確かに何かの匂いで何かを思い出すことはよくある気がします。
最近ヒットした曲にも、ドルチェ&ガッパーナの香水で彼女を思い出すという歌詞がありましたがさもありなん。
そこまで明確な対象がなくても、なんとなくイメージだけを思い出すことも多いものです。
蚊取り線香の匂いで夏休みのおばあちゃんちを思い出すとか、キンモクセイの香りで小学校の通学路を思い出すとか。
私はなぜかラベンダーの匂いを嗅ぐと何か昔のことを思い出しそうになります。何か思い出しそうで思い出せないという不思議な感覚になるんです。
実は小説『時をかける少女(筒井康隆)』にも同じ内容の記述があって、初めて読んだ時は驚いた経験があります。
私ももしかしたら同じ経緯でラベンダーの匂いを・・・なんて考えたりもしました。興味がわいた方はぜひ一読を。
五感
五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つのことを言いますが、この中で嗅覚だけが人間の脳の中で特別な動きをすることがわかっています。
嗅覚以外の4つの感覚は脳の視床という「思考」を処理する部分に一度情報が送られますが、嗅覚だけは海馬と扁桃体という「記憶」と「感情」を処理する部分にストレートに送られます。
だから匂いは記憶と直結して、感情とセットで脳に刻み込まれるんですね。
そう考えると、同じキンモクセイの匂いでも、いい思い出がある人にとっては「いい匂い」であり、嫌な思い出がある人にとっては「いやな匂い」となるのもうなずけます。
また嗅覚は味覚にもかなりの影響を与えており、私たちが普段食べているものの味にも影響があります。
目隠しをして鼻をつまんでコーヒーとお茶を飲み比べしても味の違いがわからないという有名な実験があるほどです。
試しに鼻をつまんで食事をしてみると、本当に味気がないことがよくわかります。
鼻をつまんでチョコレートを食べてみると、チョコレートの味は砂糖の味覚「甘み」とカカオの「匂い」の2つで構成されていることがよくわかります。
嗅覚が衰えると食欲がなくなる。このことが実感できます。
家のにおい
朝起きて会社に行き仕事をして自宅に帰る。そして寝る。
この1日の間に私たちはどれだけの匂いを感じているんでしょう。
私が毎日感じている匂いといえば、そう、自宅前の川沿いの道を通る時の匂いでしょうか。
これって川の匂いなのか、桜並木の匂いなのか、それとも近所のお店から出す何かの匂いなのか。
とにかく「帰って来たなぁ」と思える、ホッとする匂いであることは確かです。
会社員の方であれば、会社の匂いというものもあるでしょう。会社のエレベーターの匂い、事務所の匂い、休憩室の匂い、トイレの芳香剤の匂いなんてのも。
私はケアマネジャーという職業柄いろんなお宅に訪問するのですが、それぞれの「家の匂い」というものが当然あります。
以前に担当していた方と同じ匂いがするお宅にお邪魔した時に「あれ・・・この匂い・・・いつどこで訪問したっけ?」ということが起りがちです。これ他のケアマネさんにもあるあるだと思います。
気分転換
私は事務所の中で、お香やエッセンシャルオイルで気分転換を頻繁にしています。
白檀(びゃくだん)や沈香(じんこう)、レモンやオレンジ、グレープフルーツなど。
これらも確かに良いのですが、他にも変わった匂いがあれば楽しいですね。
例えば「雨のにおい」。雨が降りたてのほこりっぽい匂いは子供の頃を思い出させます。
「土間のにおい」なんてどうでしょう。田舎のおばあちゃんちの玄関を入ったところのかび臭い土の匂いなんて旅情満点では?
「草刈りしたてのにおい」など好き嫌いがはっきりしそうですね。「夏の草いきれ」というやつ。
さてさて、今日は塩素強めの「市営プールのにおい」でも楽しみますか・・・
トイレのドアを少し開けておいてパソコンに向かう。おーなかなかじゃないの。いい感じ。
炎天下でプールの脇、麦わら帽子をかぶりノートパソコンで仕事をしている気分だ・・・いやそれは言い過ぎか。
まあ、たまにはやらかすのも悪くないですね。


