見当をつける

私は毎朝、始業前にレギュラーコーヒーを淹れます。

朝イチの訪問がある時はインスタントにすることもあるのですが、少し時間がとれる朝には必ずレギュラーを淹れます。

レギュラーコーヒーというものは、ペーパーフィルターを折ってドリッパーにセットし、コーヒーの粉を入れてからお湯を注ぎます。言わずもがな。

もう少し流れを分解すると、セットしたフィルターには一度お湯を通してからそのお湯を捨てて、そこにコーヒーの粉を入れてもう一度お湯を注ぎます。

お湯は一気に注ぐのではなく、いったん少量のお湯を注いでからしばらく待った後にお湯を注いでいきます。

いわゆる「蒸らし」という工程ですね。

この蒸らす時間は私の中で約1分間と決めており、いつも壁時計を見て計っています。

計っていると言ってもテキトーなもので、お湯を注いだ瞬間にチラッと時計の長針と秒針を目に焼き付けるんです。

ところがこの「1分間」が、その日の自分の感覚によってバラつきが出るんです。

つまり自分が1分間だと思う「見当」が日によって大きく異なるのです。

体感時間

その時にやっている作業の内容によって大幅に時間の感覚が変わるのです。

ただ漫然とネットニュースを流し読みしているような時には、1分間の「実際の時間」と「自分の感覚」はほぼ同じです。

ところが昨日の留守番電話を確認していたり、メールチェックをしていたりするととんでもないほどの誤差が生まれます。

「あ、コーヒーの蒸らし中だった!」と気づいて時計を見ると、まだ30秒しか経っていなかったり3分も経っていたなんてこともあるのです。

一瞬でも他のことに頭を取られると時間の感覚が無くなる・・・

これって面白いような怖いような、不思議な気がします。

時間の感覚は年齢によっても大きく差があることがわかっています。

年齢別に時間の体感を研究した有名なデータがあります。

北海道大学が行った研究で「1分経ったと思ったらボタンを押してください」という指示を様々な年代の人に行ったものです。

この結果は私にはかなり衝撃の内容でした。

話半分

20代の平均は「61秒」だったそうです。

これは「そろそろ1分経った頃だろう」と自分が感じてボタンを押した実際の時間は、20代の人の平均で「61秒」だったということです。

ほぼ誤差なく正確ですね。

ところが70代の平均時間は「32秒」だったというのです。

これはどういうことを意味するかというと、高齢者は実際の時間を2倍の長さに感じているということです。

15分を30分に感じ、30分を1時間に感じる。

そう考えると、行列に並んで店員にクレームを言っている高齢者にはそれなりの原因があるということです。

若い人の2倍の時間を体感し、かつ加齢のために前頭葉が委縮して我慢が効かなくなっているという相乗効果でいわゆる「キレる老人」という現象が起こるのです。

よく高齢者から聞く話で「病院が混んでいて1日がかりだったわよ。もうぐったり!」と言う愚痴は、話半分に聞かなければならないということ、ですね。

見当識障害

認知機能が衰えると「見当識(けんとうしき)」に障害が出てきます。

見当をつける能力、つまり日常生活の中での「見立て」が出来なくなります。

代表的なものとして日時や季節、場所や人に対して見当をつけることが困難となってきます。

季節にそぐわない洋服を着たり、孫を自分の子供と勘違いしたり、自宅にいるのに「自宅に帰りたい」と言ったりすることが増えてきます。

これは「見当識障害」の症状であり、認知症の中核症状のひとつなのです。

見当識障害を緩和するものとして『リアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)』という療法があります。

これは日常生活のいろんな場面で家族やスタッフが本人にいろんな質問を繰り返していくというものです。

本人の個人的な事や現在の日時、今いる場所、天気、外の音、匂いなどを本人に伝え質問していくことで、周囲への関心を高めて現実認識能力を向上させていきます。

私たちが普段散歩をしていると、車いすの高齢者と付き添いの施設職員と思しき人の姿を見かけることがあります。

「ほら、あそこに花が咲いてますよ! きれいですねー」
「あら、黄色い花ね。なんて花だったかしらね。春ねぇ・・・」

こんなありふれた会話、実はとても意義のあることなんですね。

ルーティーン

ところで私自身の見当識はどうなんだろう?

ということでコーヒーに蒸らしのお湯を注いで時計を確認し、1分経ったと思った頃に時計を見てみることにしました。

いつもはこの間に何かワサワサと仕事をしているのですが、今回は何もせず、ただボーっとしてみます。

左手にポットを持ったまま、立ち昇る湯気を見つめます。

平和だね~。いい匂いだ。

ルーティーンを持つということは一日の流れを作るのにはとても有意義だ。それを行うことによって少しずつ気分が高まっていく。作業はゆっくりしていればいるほどいいものだ!

以前に手帳に使うペンを万年筆にしていたことがあった。あれは良かったなぁ。定期的にインクを吸わせる必要があって書き物を中断する必要が出てくるけどそこがまたイイ。インクボトルをおもむろに取り出してキャップを開ける。万年筆を分解すると中に回転軸が入っていてそれを回すことでインクが吸われていく。ペン先をインクに少しだけ浸してゆっくりと軸を回していく。急いでいたりすると早く回してしまいがちだがそうすると空気を吸ってしまうので落ち着いてゆっくりと一定速度で回していく必要があるんだよねー。あの万年筆どこやった?たしか引き出しにしまったはず。まだ使えるかな。多分もうインクが固まっ・・・!

1分26秒!

これって・・・

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