野菜直売所

秋が一段と深くなり、朝の通勤がつらい季節になってきました。

私の職場は駅前の繁華街から離れた郊外にあるため、寒さも体感1割増しという感じです。

郊外に向かうにつれて少しずつ緑が増えていき、自然の空気に変わっていくのがわかります。

目に見えて変化がわかるもの、それは畑が増えていくことです。

住宅街のあちらこちらに畑が見え始め、無機質な街の色に緑の差し色が心を和ませてくれます。

畑は季節によって作物が変わり、それを遠くから見るのも楽しみのひとつです。

おーサヤエンドウを植えつけたかー、もうそんな季節かー
サトイモの葉っぱが倒れてきたぞー、そろそろ収穫だねー

こんなところで季節を感じることができる。小さな幸せを感じる一瞬です。

私は自分でも野菜を作っているので畑を見て野菜がわかりますが、一般の方には難しいかもしれません。

そこで一般の方でも季節を感じることが出来るスポットがあります。

「野菜の直売所」です。

直売所発見

私の通勤途中、住宅がまばらとなった辺りに大きい畑が現れます。

自動車がやっとすれ違うことが出来る幅の道路を挟んで、両側に空き地のような風情の土地があります。

そこはよく見かけるようなプロの農家が作る整然とした畑ではなく、雑草も生え、木も生い茂った感じの場所なのです。

その敷地から降りた道路沿いに、長さ5メートル程の簡単な木組みのテーブルが設置されています。

ところがこのテーブルが程よく黒く朽ち果てており、普段は存在すら気づきません。

通勤の時間は当然早朝と夜なので、この場所にテーブルがあることはしばらく気づきませんでした。

ある日のこと、仕事中にこの場所を自転車で通過した時、普段と色が違うことに気付きました。

ん? と二度見するとそこには白いビニール袋が並んでいます。

自転車をバックさせてよく見ると、黒いテーブルの上にいろんな野菜が袋づめで並んでいました。

始めてここが「野菜の直売所」だと気づいたのです。

旬の野菜

いかんせん、こういう直売所って敷居が高いわけです。

無人の直売所に気軽に寄って、農家の人と一つ二つの会話を交わして旬の野菜を買うなんてとてもとても・・・

そんな訳で直売所の存在を認識した後でも、野菜を買うことはありませんでした。

それでも通勤時には、今まで死角となっていたテーブルが存在感を増していたことは否めず。

そんなこんなで過ごしていたある時、出会いは突然訪れました。

休日出勤をしたある日の午後、早めに退社して直売所の前を通りました。

すると見たこともないほどの大きなビニール袋が並んでいました。

勇気を出してテーブルに近づくと『筍』と書いた段ボールの切れ端が置いてあります。

実はその日、私はなぜか朝から「タケノコご飯」の腹になっていました。理由は不明。朝のニュースで見たのかも。

袋は3つほどあり、そのうちの一つを開けて中を見てみると、なんとタケノコの詰め合わせでした! きゃー!

カン!

袋の中には、長さ50cm、直径12cm程の「孟宗竹(もうそうちく)」と細い「真竹(まだけ)」が数本入っていました。なんとご丁寧にあく抜き用の「米ぬか」まで!

値段はなんと『500円』って安いじゃないの! よし買ってみよう! この直売所では初めての購入だ!

さて、ドキドキの支払いタイム。

テーブルの真ん中にはガビガビに錆びた缶が置いてあります。これ直売所あるあるです。なぜか絶対に缶。たぶんクッキーが入ってたヤツ。

蓋を開けると空っぽ。私が1番客? そこに財布からおもむろに取り出した500円玉を落とす・・・

ダジャレではないが、缶から「カン!」とカン高い音が響く。もしやこの音が購入の合図になっているのかも。

思わず周囲を見回してみる。ちょっと恥ずかしい。でも満足。

リュックにタケノコを詰め込み、土の香りとともに家路につきました。

それ以来、私はココを通り過ぎるときには必ず野菜のラインナップを確認し、タイミングが合えば購入するようになりました。

ほのかな温かさ

農家の直売所は至る所にあり、自分の近所にはないと思っていても実は隠れたところにあったりするものです。

都会にはないだろうと思うのも大きな思い違いで、東京23区にもたくさんの直売所があるんです。

私の知っている所では、中が見えるコインロッカーを利用した直売所があります。

欲しいものを窓から確認し、コインを入れて扉を開けて購入します。

コインロッカーなので100円単位でしかお金を入れられません。では150円で売りたい野菜は一体どうするのでしょう?

答えは、ロッカーの中に見えるようにお釣りを入れておくのです。この場合は10円玉5枚を野菜の手前に置いておくんですね。賢い!

季節を感じて、人のやさしさを感じて、旬の味を堪能できる「野菜の直売所」。

言葉のやりとりはなくても、ほのかな温かさを生産者とやり取りできる気がします。

ぜひ一度だけでも経験してみることをお勧めします。たぶんハマります!

昨日は「栗」を買っちゃいましたぁー。おっきいのがたっくさん入って300円。

3つの袋からよさげなものを品定め。きれいで大きいものがたくさん入ったものを選ぶ。

よし! これに決定! うまそー!

カン! カン! カン!

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