9月の声も聞こえてきた今日この頃、いまだに暑い日が続いています。
とは言え、夕方にはもう薄暗くなり、涼しい風が吹くようになりました。
徐々に日が短くなっていることを実感します。
夕方、茜色に染まる空を仰ぐと、何やら黒いシルエットが飛び回っています。
どうやらコウモリのようです。
コウモリなんて、何の興味もなく、近くで見たこともなく、なんか気味が悪い・・・というのは一般的な感想。
私も持っている知識と言えば、学校で習った「コウモリは哺乳類」ということぐらい。
この時は「クジラが哺乳類」と聞いた時と同じくらいの衝撃でした。
まあそんなレベル。全く興味もなく、自分の人生でかかわることもないと思っていました。
つい数年前までは・・・
なんかいる
あれは数年前の冬。12月のある晴れた日でした。
朝起きて、自宅の北側にある部屋のカーテンをいつものように開けました。
窓の外側の上枠に5cm程の黒い物体がぶら下がっていました。
一目見て非日常のものとわかる、ただ物ではないオーラを漂わせていました。
いったい何者なのかはわからず、恐る恐る近づいて見てみる。
黒いと思っていた物体は、近づいてよく見てみると茶色で枯葉のような色でした。
どこからどう見ても、子供が見ても大人が見ても、さかさまにぶら下がっているコウモリでした。
青空いっぱいの窓の中に、コウモリがぶら下がっている画はなかなかシュール。
ニューヨークあたりの美術館にあってもおかしくはない、は言い過ぎか。
本来コウモリなんかは、屋根裏とかの薄暗い場所で冬眠するんじゃなかったっけ?
冬眠中
この場所、実は空からは丸見えの場所で陽ざしを遮るものもない場所。
しかも私の自宅はマンションの中層階なので、本来コウモリの飛びまわる高度よりもかなり高いんです。
いったい何が悲しくてこんなところで冬眠しちゃったんだろうか。
とりあえず観察しとくか、こんな機会もめったにない。
恐る恐る窓に顔を近づけていく。間にガラス戸があるといってもやっぱり怖い。
足先から頭の先まで約6cm。よくテレビで観るような黒光りしたマントにくるまっているという感じではなく、やや丸みを帯びた形。色はタヌキと同じ色。毛は太めだが柔らかそう。顔は豚みたい。ドラゴンボールのピッコロ大魔王のような耳がある。
1cmの至近距離で見ると、意外とかわいい顔をしていて、確かに「鳥類」ではなく哺乳類の「動物」が寝ているという佇まいでした。
そっとそっとカーテンを閉める・・・
明日はどこかに飛んで行ってしまうだろう、と思っていました。
ところが、翌日もその翌日もそこから動かないんです。
アブラコウモリ
朝起きると静かにカーテンを開けてコウモリくんの存在を確認する。これが日課となりました。
多少身体の形が変わることはあっても、コウモリくんはずっとその場所にい続けました。
調べてみると「アブラコウモリ」という一般的なコウモリのようで、3月頃まで冬眠するらしい。
もしかして3月の冬眠明けまでここで?
ひとつ心配だったのは、野鳥に襲われることだけでした。
年の瀬も押し迫ったある晴れた朝、いつものようにコウモリくんを観察していた時、ふと思い立ちました。
「ちょっとだけ触ってみようかな」
ずっと開かずの扉だったサッシ窓のロックをそっと外す。
コウモリくんと反対側の窓を、そりゃもうめちゃめちゃ慎重に開ける・・・
腕が通る分だけ窓を開けて、そこから手を入れ、コウモリくんの背中にそっと触れてみました。
別れ
「硬っ!」
これもう、ほぼ「たわし」です。こんなに柔らかそうなのに。
そっと窓を閉める。コウモリくんは寝たまま。
ちょっと触っただけで一気に心理的距離が近くなり、かわいい友人にように思えました。
そんなこんなで冬休みの自由研究を続けていましたが、年明け早々事件が起こりました。
朝いつものようにカーテンを開けると、コウモリくんがいないのです。
野鳥に襲われたのかとも思いましたが、窓の周辺を観察しても毛が落ちている等の異常も見られません。
どうやら飛び立ったようです。
1月の寒空に飛び立ったのか・・・まだ寒いだろうに・・・ちょっと悲しくなりました。
「短い付き合いだったね」
数年経ったいまでも、カーテンはそっと開けてしまうんです。
何かを期待しながら・・・


