経管栄養について

私たちは普段、当たり前のように食べ物を口から食べています。

これは医学的には「経口栄養(けいこうえいよう)」と呼ばれます。

ところが何らかの理由で口から栄養を摂れなくなった場合、代わりの手段で栄養を摂る必要があります。

言い換えれば、経路を替えて身体に栄養を届ける必要があるわけです。

今回は「経鼻経管栄養」から「中心静脈栄養」まで解説していきます。

経鼻経管栄養

口から食べ物が摂れなくなった際の第一選択となるのが「経鼻経管栄養(マーゲンチューブ)」と言われる方法になります。

「経鼻経管栄養」とは、鼻から管(チューブ)を挿入して胃に栄養を送る方法です。

やり方はベッドの背中を少し上げ、栄養剤を鼻からのチューブに接続し少し高い位置から点滴のように注入していきます。

経鼻の最大のメリットは手術をする必要がないという事です。

短期間が見込まれる場合には、手軽に挿入でき、手軽に抜去できる経鼻が最善の方法になります。

一方、デメリットとしては本人が感じる鼻への違和感があります。

これは当事者としてはかなりの違和感のようで、鼻の中に異物が常に入っているという状態はかなりストレスフルだと本人から聞いたことがあります。

寝ている時に無意識に抜いてしまうことが多いのもうなずけます。

胃ろう

「胃ろう(胃瘻、ペグ)」とは、胃とお腹に穴をあけてチューブを通し、そこから直接栄養を胃に送ることを言います。

一般的には経管栄養をする期間が1ヶ月以内であれば「経鼻」、それ以上であれば「胃ろう」が検討されます。

胃ろうのメリットとしては、一度造設してしまえば身体的、精神的な負担が少ないという事や、口から食べる方法と併用できることなどが挙げられます。

洋服を着ると隠れることや、お風呂にもそのまま入れることなどもメリットです。

一方で造設するための手術が必要な事や、間違って抜けてしまう事故(誤抜去)が多いことがデメリットとして挙げられます。

私が以前に介護事業所の所長をしていた時代には、定期的にヘルパーによる誤抜去が発生し医師やケアマネに慌てて連絡を取っていました。

誤抜去した場合、胃の粘膜は3時間程度でふさがってしまうため、すぐに医師に連絡しチューブを挿入しなければなりません。

よく医師からは「誤抜去した時は穴が埋まらないようにすぐにきれいに洗った塗り箸かストローを挿入すればいい」と言われたことを覚えています。

人間の修復力、回復力はすごいんだなと驚嘆したエピソードです。

また胃ろうのチューブが出ている皮膚の部分(ろう孔)は定期的に石鹸できれいにする必要があるのですが、ヘルパーになりたての頃はおなかの中に水が入るのでは・・・と考え、恐る恐るシャワーでお湯をかけて洗うという「新人ヘルパーあるある」があるんですね。

一般的には胃ろうから水が入ることはまずなく、水圧より腹圧の方が高いため浴槽に入ることもできるのです。

胃ろうのほかにも「腸ろう」などもあり、介護業界では目にする機会が多い栄養摂取方法になります。

中心静脈栄養

胃ろうや腸ろうは、胃や腸に直接栄養を届ける方法であるため、胃や腸などの一連の消化器官がある程度元気で機能していることが前提となります。

ところが消化器官が正常に機能してない場合や、一定期間消化器官を休ませる必要がある場合には、血管に直接栄養を入れる必要があります。

その際に、腕などに針を刺して点滴をする「末梢静脈栄養」と、心臓の近くにある太い血管にカテーテルを通して点滴する「中心静脈栄養」などが検討されます。

「末梢静脈栄養(PPN)」はいわゆる「点滴」のことで、腕にある静脈から栄養を入れていくのですが、腕にある静脈は細いため一度に入れる栄養量に限度があります。

1日に1,000kcal程度の摂取が限度となり、それ以外の栄養摂取が併用出来ない場合には不十分になります。

その場合、より多くの栄養が摂れる「中心静脈栄養(TPN、IVH)」が選択されます。

一般的には1週間程度であれば「末梢静脈栄養」、それ以上の期間であれば「中心静脈栄養」が選択されます。

「中心静脈栄養」とは、心臓の上にある「上大静脈」という太い血管にカテーテルを通し、そこから栄養液を入れる方法です。

血管が太く流れも速いため、1日に2,500kcal程度まで入れることが可能で、十分に1日の栄養を摂取することが出来ます。

身近なところでは、鎖骨や胸の辺りにポコッとしたふくらみを持った人を見かけたことがあるかもしれません。

やや大きめで平らな金属的なふくらみは「心臓ペースメーカー」なのですが、小さい丸いポコッとしたふくらみは「CVポート」と呼ばれるもので、静脈に留置したカテーテルとつながった先端部になります。

先端部は皮膚の下に埋め込んであり、そこに「ヒューバー針」という専用の針を刺して栄養を入れていきます。

刺すときにはチクっとした痛みがあるようです。

針を外せばポート部分は服の下に隠れますし、お風呂にも入れるため身体的、精神的な負担が少ないのが最大のメリットです。

予備知識を持つ

今回は口から食べられなくなった際の医学的な栄養摂取方法について解説しました。

介護にあたっている方にはもちろん、これからご家族、ご自分にも起こりうることです。

いざというときに知識があるとないとでは、その後のQOL(生活の質)に大きな影響を与えることも考えられます。

落ち着いた精神状態で医師と話し合いができるよう、予備知識を持っておくことをお勧めします。

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