胃カメラを飲む

会社の健康診断に行ってきました。

と言ってもちっぽけな会社ゆえ大企業のような社内クリニックなどあろうはずもなく、近隣のクリニックで費用会社持ちで受診してきました。

健保から送られてきた申込書を見ながら、事前に健診の申し込みをします。

ご存じの通り、基本の検査項目とオプションでの追加検査項目が一覧となっています。

基本の検査項目は、血液検査、視力、聴力、心電図、X線、バリウムなど。

これらにはない追加の検査を希望する場合は、事前に申し込み、その分の料金が追加されるという仕組みです。

一覧を見てみると、ピロリ菌抗体検査、アレルギー検査から、脳梗塞や心筋梗塞、認知症のリスクを調べるものまであります。

「こりゃスゲー」と嘆息せざるを得ません。すごい時代になりました。

こんなA4一枚の中に医学の進歩をずっしりと感じました。

一滴の血液からすべてがわかるという時代はそう遠くないのかも・・・

オプション料金

それにしてもお高い。高すぎる。

追加のオプション料金が高すぎて、どれもこれも追加できない。

基本項目分は会社持ちとなりますが、追加項目分は社員の自腹となるわけです。

こうなると「まあ基本の検査だけでいいかっ!」となりそうな自分を鼓舞し、何か一つでも追加しようと決心。

さてどれにしよう?

3万円とか4万円は論外として、4、5千円くらいで費用対効果の高い検査はないか・・・

ここでピックアップされたのが「上部消化管内視鏡検査」。

いわゆる「胃内視鏡検査」、すなわち「胃カメラ」です。

ご存じの通り、バリウム検査は基本検査項目に含まれています。

この場合、バリウム⇒胃カメラに変更というオプション料金になるわけですね。

バリウム検査

バリウム検査、すなわち「胃部X線検査」といえば、よく聞く不満として、バリウムがまずい、動くのがつらい、検査後のトイレ問題、などがあります。

私はバリウム検査に特別不満はなく、逆に検査技術の進歩を目の当たりにするのが割と楽しみでした。

大昔は「バリウム」と言えば「マズイもの」の代名詞であり、例えるならば「砂を飲む」感覚でした。

そんなマズイ代物をば、なななんと500mlも飲まされるわけですからたまったものではありません。

それが今や「130ml」となり、さらに「イチゴ味」となったのですから、毎年感心しながらバリウムを飲み干していました。

ただ難点としては検査の精度が低いこと。

バリウムでは胃の全体像を把握でき、胃カメラでは胃の細部を観察できる、らしいです。

ある統計によると、早期の胃がんの8割強は「胃カメラ」で発見されているそうです。

「バリウム」での発見率は1割程度なのでその差は歴然なのです。

バリウムの結果で要検査となり胃カメラをした経験がある方であれば、なおさら初めから胃カメラと思うでしょう。

ちなみに現役の医師でバリウム検査を受ける人は皆無というのは有名な話。よし胃カメラでいこう!

経口と経鼻

というわけでクリニックに予約の電話を入れる際に「バリウム検査⇒胃カメラ」の変更オプションを申し込みました。

受付の方から「口からにしますか鼻からにしますか?」と問われ「経鼻」を選択。

「経口」「経鼻」の選択については人それぞれ、好みの問題ですが、過去の経験から私には「経鼻」の方が楽でした。

「経鼻」には「経口」特有の「オエッ」がない分、身体への負担は少なく感じるんですね。たぶん。

そんなこんなで検査当日。

看護師さんに促され検査室のベッドに座ると、小さなカップに入った液体を渡されます。

「消泡剤」という胃の中の泡を消す白い液体なのですが、これがマズイ!

なんとも形容しがたい、たとえようのない味! 苦いのか渋いのかもわからないレベルです。

「あーイチゴ味のバリウムが飲みたい・・・」としみじみ思っていると、鼻の中にスプレーを数回噴射されました。

「局所血管収縮剤」という鼻血止め。なんか鼻の中が変な感じ・・・

天井を見る

看護師さんが次から次へのいろんな道具を持ってくるのがちょっと怖いです。

時代劇でよく見る、江戸幕府方が悪党の手下を拷問して白状させる画をほうふつさせます。

「おい吐け! オマエがやったんだろ!」ってやつ。

今度はとびきりの笑顔とともにデカい注射器を持ってきました。

気絶寸前の私に「局所麻酔剤を鼻の中に流し込みますねー」と。なるほど針はついていない。

何やらドロドロしたゼリー状のものを鼻の中に流し込み、鼻にシリコンっぽい短いチューブを入れて、看護師さんは颯爽と検査室を後にしました。

ベッド上で独り・・・天井を見ている・・・

この感じ・・・なんだろうか・・・生死の境目にいる感覚・・・

鼻にチューブを通していることも影響しているのか、自分の今までの人生などが走馬灯のように頭に浮かびます。

「人生最期の瞬間もこんな感じなんだろうか・・・」

そんな悲しい気分を打ち消すように看護師さんに呼ばれ、隣の検査室のベッドに横になりました。いよいよか。

突っ込む

横向きになると視線の先にモニター画面があり、ここに私の胃の映像が映されるはず。

医師が登場し、鼻から入れる「ファイバースコープ」をチェックしています。

「わかりました! すべて私がやりました!」と幕府方に白状しそうになっている悪党の鼻にスコープが入っていきました。

おー、割とスムーズ。入り始めだけ違和感がありますが、それ以降は鼻の感触は問題なし。胃の中では多少の違和感はありますが。

医師がモニターに映された映像を見ながら、カメラの現在地と胃の状態を解説していきます。

「ここが食道と胃の境目。あーちょっと炎症がありますねー、赤くなってるのがわかります?」

「ひゃい、わひゃりまふ」

検査も無事終了し、幕府方の親分も去っていくと、私にも心の平穏が訪れました。あーやってよかった!

昭和の時代、胃カメラの検査を受けることを『胃カメラを飲む』と表現していました。

令和の時代、『胃カメラを突っ込む』と表現するべきか・・・

てなことを考えつつ、ティッシュで鼻を押さえながらクリニックを後にしました。

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