方向おんち

私の従事しているケアマネジャーという職種は日々担当している方のご自宅を訪問しています。

訪問先が事務所の近隣であることもあればなじみのないエリアであることも、また隣の市区町村まで遠征する機会もあったりします。

初めて訪問する際は依頼先からいただいた情報をもとに住所をネットで調べておおよそのアタリをつけてから出発します。

すんなり到着すればいいのですがゴールが住宅街で入り組んでいたりするとあと一息のところで辿り付けなかったりすることもあるんですね。

そこで必要な能力、それはやっぱり方向感覚です。

自分が今どっちから来たか今どの位置にいるのかを把握するためには感度の高い方向感覚が大切です。

私の場合、自宅までたどり着けないという事はほぼなく方向感覚は人並み以上にあると思っています。が・・・

自宅に一歩入ると状況が一変! 方向が全く分からなくなるのです。

これを自分で「方向音痴」と表記するのはさすがに激しい抵抗感があるため以後「方向おんち」と表記します。

ひらがなでちょっとカワイイ感じになるし、一瞬パッと見「長崎くんち」に見えないこともない・・・

いやそっちじゃなくて

ケアマネジャーは訪問先で近隣のスーパーやクリニックなどの話になりその方向を指差すことが頻繁にあります。

私がその方向を指差した時、相手からの恐怖の返し言葉は「いやスーパーはこっちよ」という言葉。

その相手は正反対を指差しながらそう言うのです。

私は激しくうろたえながら差した指を背中に隠し、頭の中で今日来たルートを玄関から順番にさかのぼりようやく方向を確認。

滝のような冷や汗とともに「あっ、こっちでしたよねー」とさっきと180度反対の方向を指差す・・・

これもうお約束のシーンなのです。

また「では今日はこれで失礼いたします」とご挨拶をして退室しようと寝室のドアを開けてしまうことも日常茶飯事。

「いやそっちじゃなくて・・・」

ある時は「お邪魔いたしました」と言って押入れを開けてしまい、ほうきとちりとりがバタバタと倒れてきたこともあります。

「またまた~面白いわね~」と笑ってくれたため「なんちゃって~」などとややヘビー目な死語を繰り出し、さもネタでした的な雰囲気にしてごまかしましたが正直気絶寸前でした。

この時は初回訪問にもかかわらず話が盛り上がっていたため笑ってくれましたが、通常のケアマネの初回訪問というものはかなりピリピリしていることが多くこんなことをヤラカシたら一発アウトです。

デパートのトイレ

どうやら私は室内に入ると自分がどっちから来たか、部屋の中で玄関がどっちの方向かがわからなくなるようなのです。

戸建て、マンションにかかわらず起こるのですが外出先でも絶対にダメな場所があります。

それは「デパートのトイレ」です。

いつもフロアの案内板でトイレの場所を確認しトイレの中に入っていきます。

そこまではいいのですが手を洗いトイレの出口から一歩出た瞬間、足が止まるのです。

右から来たか左から来たかがわからないのです。

これを人に共感してほしくて何度かカミングアウトしたことがあるのですが共感ゼロ。かなりビックリされます。

これってどういう脳の仕組みなんでしょ? 一体どういう欠陥なんでしょ?

トイレの出入り口で慎重に左右を確かめてから袋小路になっていない方向に恐る恐る歩きだしますが、5回に1回は行き止まりもしくは従業員通路などに行ってしまいます。

長年解決法が見いだせないまま今まで生きてきたわけです。

迷子の記憶

周りの風景が見えない場所だと方向おんちになるのでは? と思ったこともありますがそういうわけでもないのです。

その証拠に屋外テーマパークにある巨大迷路をグループで競争した時にはダントツの優勝でした。

その迷路は壁が高く周りが見えない構造でしたが野生のクマの如く出口の方向をしっかりと把握できていました。

そうすると考えられるのは「デパートが体質的に合わない」という非科学的な解です。

さて子供の頃にはデパートとの相性はどうだったかを思い出してみると・・・

なるほど迷子になった酸っぱい記憶がまざまざと思い出されます。

5歳くらいの私はなにやら機器が並んだ無機質な部屋に制服を着たおねえさんに連れて行かれパイプ椅子っぽいものに座らせられやさしく名前を聞かれた記憶がおぼろげながらあります。

名前なんか教えたくないのにおねえさんの圧に負けてフルネームを教えてしまい館内放送が流れ母親が駆け付けてきた記憶です。

「そもそもボクは迷子になんかなってないし!」と強く思っている記憶と母親が来てくれて「うれしー」とホッとしている記憶です。

「うれしー」と思っている時点で迷子だったという証明なんですが当時のこの子は全く気づいていませんでした。

訪問先自宅内おんち

何度も迷子になっていたのは「デパート内方向おんち」という特殊能力?のせいなのでしょうか。

そして今はそれを克服し「デパート内トイレ内方向おんち」に昇格しそれが転じて「訪問先自宅内方向おんち」になっているのでしょうか。

どなたかこれを鋭意研究し「イグノーベル賞」を狙っていただきたいと切に願います。

ところで私が初回の訪問先に向かうとき道に迷わないようにするために実践しているコツがあります。

その方法は「この曲がり角は間違えそうだな」と思った時は一度立ち止まり「後ろを振り向く」のです。

たったこれだけで迷った時のリカバリーが格段に速くなります。

つまり曲がり角の反対方向からの風景を目に焼き付けるのです。

これをすることによって次に同じ曲がり角に差し掛かった時の情報量が増えグルグルと堂々巡りになることを防いでくれるはずです。

特に最近は地図アプリを見ながら移動することが多いので周りを見ていないことが多く同じ場所をグルグルしやすいのでこの方法はかなり有効です。

いやいや「デパート内トイレ内方向おんち」の特殊能力保持者にアドバイスされたくない!

などと言わずぜひ一度お試しください。

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